オカルトの歴史でめぐる西洋ヨーロッパ(古代~中世編)

オカルト(神秘学)の歴史(古代~中世ヨーロッパまで)におけり重要人物を歴史をまとめた。
欧米の史学科あたりだとオカルト史はわりと一般的な研究テーマらしいので、世界史に興味のある人は読んでみて。

オカルトでめぐる西洋の歴史・古代~中世編

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古代末期

名実ともにローマ帝国の最盛期。
地中海沿岸全域から、ヨーロッパの殆どの地域、北アフリカ一帯から西アジアなどをはじめとする大規模な領土を皇帝が支配。それに比した高い文化レベルから様々な思想が生まれた。

オカルト史的には、古代ギリシャ哲学やユダヤ教神秘主義、そして帝国領内のユダヤ属州で生まれたキリスト教など、後の時代に影響をあたえる要素がこの時代に誕生。

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テュアナのアポロニウス (1世紀)

小アジア、カッパドキア出身の新ピュタゴラス学派に属する哲学者。ローマ帝政時代には神秘主義者、魔術師として知られカラカラ帝は彼のために神殿まで造っている。
アポロニウスが今日よく知られるのは、ゲーテをはじめとする近代の作家や、エリファス・レヴィによる降霊など、多くの著名人に取り上げられたためである。

シモン・マグス ( 1世紀頃)

グノーシス主義の源流の一人とされる人物。
洗礼者ヨハネの弟子であったがヨハネの斬首後、アレクサンドリアで魔術を学んだ。その後ペテロに反抗してローマに行き、クラウディウス帝の前でペテロと論争して破れ、魔術で空を飛ぼうとしたが、ペテロの祈りを受け、墜落して死んだという。

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アキバ・ベン・ヨセフ (50-135)

ユダヤ教神秘主義の大家で当時最大の律法学者。
ユダヤ教口伝律法の集大成である「ミシュナ」に定められた法規(ハラハー)の研究成果の収集整理を手がけ、そのための学校を創設。後継者の育成に努めた。

プロティノス (AD205~270)

ネオプラトニズム(新プラトン主義)の創始者。
ローマの南方カンパニアに、哲学者のための理想都市プラトン市を建設しようとして失敗したが、晩年その地に隠棲し、2年後の270年に、66歳で病死。
プロティノスの死後、弟子のポルピュリオスが整理編纂した主著『エンネアデス』がある。

後世の神秘主義者に多大な影響を与えた重要人物。

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偽ディオニュシオス (5~6世紀頃)

キリスト教史上に残る偽書を記した人物。『天上位階論』『教会位階論』『神名論』『神秘神学』および書簡は通称「ディオニシュオス文書」とよばれ、19世紀末に偽書として完全認定されるまで正典扱いされていた。

正体は5~6世紀のシリアの修道僧とも529年に閉鎖されたアカデメイア(アテネ)の哲学者とも言われ文書は新プラトン派のプロクロスの影響を強く受けたものと考えられている。

ちなみに偽(にせ)ではなく偽(ぎ)ディオニシュオスが正しい読み方。

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証聖者マクシモス (580-662)

ディオニシオス偽書の影響下に形成された7世紀ビザンチン神秘主義を代表する神学者。
彼の8冊に及ぶ著作は、神秘主義を論じたものをはじめとして多岐に渡る。
教義問題に偏りがちな神秘学者の著作とは違い、日常生活に配慮したキリスト教ヒューマニズムを説いている点が特徴で、これが後の世代に大きな影響を与えている。

中世

brown concrete palace surrounded by body of water during daytime

ゲルマンの蛮族がローマ帝国を滅ぼして始まったのが中世ヨーロッパ。
ローマ帝国時代から文明レベルが大きく後退し、ローマ教皇が圧倒的な権勢を誇っていた事から異端審問や十字軍遠征など荒みきっていた印象を受けるが、近年では中世暗黒時代の再評価が進んでおり、それなりに目を見張るところもあったようだ。

十字軍に伴う東方貿易の活発化と商権の拡大から、ヨーロッパ各地の特色ある商品が海や川を使って流通し、文化的にも従来のケルト文化やローマ、イスラム的なものが混在しながら形成され、当然オカルト文化の発展にも影響を与えている。

エリウゲナ (810-877)

フランク王国時代を代表する哲学者。
『偽ディオニシオス文書』のほか、多くのギリシア教父の著作を翻訳し、西方キリスト教世界に新プラトン主義的思想を持ち込む。
また、アウグスティヌスの思想的影響のもと、流出説に立つ独創的な哲学体系を築き上げ西洋中世の神秘思想の発端をつくる。

ヨアキム・デ・フィオーレ(1132~1202)

シトー会のカラブリア修道院の院長を務めた後、1196年、自らの聖書解釈に従って、フィオーレに自分の修道会を開く。
リチャード獅子王などとも面識があり、十字軍の見込みを聞かれるなど、有名な予言能力を持っていた。

教皇らの勧めに従って『旧約・新約聖書の一致」『黙示録註解』「十絃琴に合わせた歌」の三部作を著すが、死後、彼の思想は異端を宣告される。

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ロジャー・ベーコン (1214~1294)

「驚異博士」とよばれ、近代科学の父と称される人物。

52年フランシスコ修道会に入会し『大著作」『小著作』『第三著作」「神学研究綱要』などの著作がある。『経験科学」という言葉は彼が初めて考案した言葉。言語研究の必要性も強調し、ヘブライ語、ギリシア語の初歩的な文法書を著した。

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アルベルトゥス・マグヌス(1200-1280)

「偉大な(マグヌス)」アルベルトゥスとも呼ばれる。
「全科博士」の尊称をもち、神学ばかりではなく、生物学、物学、地質学などの自然科学にわたる膨大な著作をもち、これによって、ギリシアやアラビア科学の伝統が中世ヨーロッパにもたらされることになった。

キリスト教的ネオプラトニズムの先駆者でもあり、この流れはシュトラスブルクのウルリヒやフライベルクのディートリッヒを通じてエックハルトに至りドイツ神秘主義を形成していくことになる。

ラモン・リュイ(1235-1315)

フランチェスコ会の修道士。
キリスト教的な普遍学として、唯一の真実に至る道を発見する神秘的な方法を考案。
異なった概念を相互に結合させる思考法は、ルネサンス期に発展した錬金術と関連して研究され、後世に大きな影響を与えた。

アブラハム・アブラフィア(1240~1291 )

本名はアブラハム・ベンサムエル・アブラフィア。
「しるしの書」以外の預言者的著作は消失。手引き書は広く伝えられ、『永遠の生の書』『知性の光』「美の言葉」「組み合わせの書」などがある。
また、弟子の一人が、彼に導かれ、「名の道」によって神の真の名の認識に至った過程を「正義の門」として書き残している。

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マイスター・エックハルト(1260~1327)

ドイツ語による文献『聖なる慰めの書』を発表し、神秘主義の教義を確立。
ドミニコ会修道院で活躍後、晩年にはケルン大学で要職に就く。
死後の1329年、その著作からとられた28の命題が、教皇ヨハネス22世により異端と宣告された。

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ニコラ・フラメル(1330-1417)

14世紀の錬金術師。神学者でも医者でもなかったが熱心に錬金術を研究し、少なくとも3回は金属変成の実験に成功したといわれる。
また、印刷技術のなかった当時に代書と書籍販売、出版業を兼ねた商売を営み成功。
は多くの教会や病院に多額の寄贈をしたことから、神と貧しい者のために錬金術を用いた人物とも言われる。

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