名古屋立てこもり放火事件の場所を見てきた。
給与未払いが原因でおきたこの放火事件は「平成最悪の立てこもり事件」とも称されており、現場周辺の雰囲気を交えながらルポ。
名古屋立てこもり放火事件がおきた場所
2003年に発生した名古屋立てこもり放火事件がおきた場所は名古屋大曽根第一生命ビルで現在も残っており、現在の住所は愛知県名古屋市東区矢田一丁目3番33号となっている。
この事件は運送会社「軽急便」に所属する男性ドライバーが賃金不払いに抗議した結果ひきおこされた事件である。
男性は本社・名古屋支店のあった第一生命大曽根駅前ビルへ、出刃包丁・ポリ容器を持って侵入し支店長(当時41歳)以下男性社員8人を人質に取って支店内に立てこもり、最終的には犯人自らが火を被り自決。
この際に発生した爆発で加害者と人質の支店長が死亡し、県警の機動捜査隊隊員も一酸化炭素中毒で殉職。爆発によって飛散したガラス片などで警察官・消防隊員・報道陣・通行人ら38名が軽傷を負う大惨事となった。
この「軽急便」という会社はウーバーイーツと同じく、所属しているドライバーは会社と労働者という関係ではないため、労働基準法の適用外であり、一人当たりの年間売上が約400万円と低く、そこから経費を差し引くとドライバーの生活が事実上困難なシステムとなっていた。(また、事件当時は本部が指定した車両(軽自動車)を購入することが義務付けられていたのだった)
このため、本事件では放火したドライバー側にむしろ同情が集まる結果となった。
現場のルポ~風水的観点を添えて~
大曽根駅を降りて直ぐの場所に目的の第一生命ビルがある。
ビルの目の前には名古屋環状線と線路が走っているが、線路の形状に注目。道路が弓なりに湾曲し、その円弧の内側に建物が位置している様に見える。これは巒頭風水で言うところの「街道半弓(かいどうはんきゅう)」という凶相で「路弓(ろきゅう)」ともよばれる。
こうした建物に住むと、失火や傷害などに陥りやすいとされているが、まさか放火事件が起こるとは思わなかっただろうな。
Googleマップで別角度から確認すると、教科書レベルの街道半弓だった。信じるか、信じないかはアナタ次第といったところだが、ついでに風水的観点からコメントをすると線路を支える支柱に注目。
線路の弓の形と合わせると、支柱が矢の形に見えないだろうか。
これは「一箭穿心(いっせんせんしん)」といって、建物に向かって弓矢を射る形状である事から大凶相であると言われており、家主に生命の危険を含む災禍をもたらす可能性が高いと言われているのだが、これは偶然だろうか?
ま、偶然も風水もクソもなく、給与未払いをした会社が悪いと思います(小並感)
そして名古屋立てこもり放火事件から二十年あまり、現在の日本では軽急便の様な形式の雇用形態の会社が徐々に増え始めている。
一例として挙げられるのがウーバーイーツの様なギグワーカーとよばれる働き方で、こうした働き方を政府も推進し始めているというが、既に現状は悲惨だという。
フリー年収ボリュームゾーンは200万〜300万円
ギグワーカーも含め「仕事の獲得手段として仲介事業者を活用」している人が21.5%で、利用している仲介事業者数が「1社」という人が46.8%という調査結果がある。本業として行うフリーランスの年収は、200万円以上300万円未満が19%と最も多い。
決して高いとはいえないが、企業に雇用される労働者と比べて失業手当以外のセーフティネットも脆弱だ。そもそも労働者に該当しないので、最低賃金法に基づく最低賃金も適用されない。
有給休暇や長時間労働の規制や残業代の割増賃金を規定した労働基準法の埒外に置かれ、もちろん労働基準監督署など行政の監視対象からも外れる。さらに以下のような補償がないことが生活にも大きな影響を与える。
- 労災保険による休業補償給付、療養補償給付がない
- 健康保険による傷病手当金が支給されない
- 産前産後の出産手当金と育児休業期間中の育児休業給付金が支給されない
- 厚生年金に加入できないために老後の公的年金支給額が低い
正社員の場合、病気やケガでの療養中は休業補償を受け取れるし、育児休業給付金、出産一時金もあり、退職後は国民年金に加えて、月額10万円程度の厚生年金が上乗せされる。
フリーランスと労働者の間には、社会保障上の大きな格差が生じている。
政府が持ち上げた「多様な働き方」の皮肉な現状、ギグワーカーは労働者ではない?
個人的にもギグワーカーといった働き方は日本人に向いていない気もするのだが、どうも時代は名古屋立てこもり放火事件の時代に逆行しているようで今後の先行きが不安になってくる、とか言うまでもないんでしょうな。
事件当時の2003年よりも格差は拡大しており、経済状況は更に悪化。解決の糸口が一切見えないまま、更に格差拡大を助長するような政策を取ろうとしている以上、似たような事件が起こるのは不可避だろう。
本事件は決して特異な事件でも対岸の火事でもない。誰しもが犯人と同じ状況に追い込まれる可能性がある、そんな時代に我々は放り込まれているのだ。
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