宝塚ボーガン殺傷事件のアパートを見てきた

宝塚ボーガン殺傷事件が起きたアパートと地域を今更ながら見てきたのでルポ。
事件が起きたのは2020年の6月4日の宝塚市。「無敵の人」なんて言葉が認知されつつあった時期に発生した家族間殺人だ。

宝塚ボーガン殺傷事件のアパートを見てきた

朝日新聞の記事によると、事件が起きた現場は宝塚市の安倉西2丁目。

4日午前10時15分ごろ、兵庫県宝塚市安倉西2丁目で「女性の耳に、矢のようなものが刺さっている」と住民から119番通報があった。県警によると、近くの住宅内で親族4人がボーガン(洋弓銃)のようなもので襲われ、3人が死亡、1人が重傷を負った。県警は現場近くにいた、この家に住む大学生、野津(のづ)英滉(ひであき)容疑者(23)を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。

大学生「殺すつもりだった」 ボーガン?で4人死傷

安倉という地域は宝塚インターチェンジ南東にある大住宅街で1954年まで宝塚町の一部であったが、1954年4月1日に宝塚市の一部となった地域だ。

宝塚ボーガン殺傷事件と家族間の殺人について

2020年6月4日午前10時15分頃、宝塚市にある住宅で男女4人がボーガンのようなもので撃たれ、家族3人が殺害された事件。犯人は現場の家に住む自称大学4年生の男性で一家の長男だった。

実際は休学中の2019年9月末に学費未納で大学を除籍、実質は無職で経済的に苦しい様子だったという。

容疑者は警察の取り調べの際に「祖母、弟、母、そして電話で呼び出した叔母の順番で撃った」と述べ、特に弟に至っては頭部2カ所を撃たれていた他、ボーガンの矢には抜け難くするための「返し」がついていた事から、犯行には明確な殺意が感じられる。

また、報道によると犯行開始の数年前より母親や弟との関係が悪く家庭環境が複雑だったという。

「ボーガンで家族4人を射殺した」と言うと、さも精神異常者による猟奇的な犯行というイメージを連想しがちだが、必ずしもそうだとは言い切れない。日本で起きる殺人事件の半数が家族間によるもの。

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詳しくは「阿部恭子 (著) 家族間殺人 (幻冬舎新書)」でも触れられているが、法務省による殺人事件の動向をまとめた統計データをみても、同様の事が書かれている。

昭和54年から平成15年までは,ほとんどの年で親族以外の面識者に対する事件が親族に対する事件よりも多かったが,16年以降は逆転し,親族に対する事件が最も多くなっている。
親族率は,平成16年から上昇傾向にある(23年は52.2%)。面識率は,昭和54年以降のほとんどの年で80%台後半であり,おおむね横ばいで,非常に高い水準で推移している。
逆に言えば,検挙件数に占める面識のない相手に対する殺人事件の比率は10%強と低い水準である。

(中略)

平成10年,15年,20年,23年のいずれにおいても,憤怒,怨恨が上位2位を占め,両者で約半数となる。これに対し,介護・看病疲れ,子育ての悩みといった家族間の問題が20年において上位10位に登場しているが(注2),それとともに,動機不明と異常めいてい・精神障害等を併せた構成比が最近上昇しており,23年においては10.4%に及んでいる。

第2章 殺人事件の動向 – 法務省(PDF)

考えてみれば、家族というものは他人よりも難しい存在だ。家族だからこそ遠慮がない、家族だからこそ距離が近いからこそ、他人以上に愛憎が増して度し難い存在へと変わる事は想像に難くない。

日本人にとって、最も近くて遠い存在が家族なのだ。「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」で描かれているような、暖かな家族像というのは、やはりフィクションであり幻想だろう。

「日本で最も殺人事件が起こりやすい場所はどこか?」と聞かれれば、それは間違いなく「家庭」であり、家族こそが身近な潜在的殺人犯であることは統計的に間違いない。

しかし、家族とは社会の最小単位。誰しもが一人では生きていけない以上は家族と向き合って生きていかなければならない、だからこそ我々は誰しもが加害者/被害者になりうる。

他の事件と同様、この事件もまた対岸の火事ではないのだろう。

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