渋谷ホームレス殺害事件,幡ヶ谷バス停殺人事件とも称される殺人事件の現場を探索してきた。
この事件は、路上生活の年配女性を引きこもり中年男性が殺害した事件。
日常生活の場を殺人という非日常の空間に変える「歪み」について、考えざるを得ない現場探索だった。
渋谷ホームレス女性殺害事件の現場を探索してきた
渋谷ホームレス殺害事件とは?
2020年11月16日午前4時頃、甲州街道沿いの幡ヶ谷原町バス停ベンチにいたホームレス女性64歳を、近所に住む無職男性46歳が、石などを入れたポリ袋で殴り死亡させる。死因は外傷性クモ膜下出血。
加害者は11月21日、母親80歳に付き添われて出頭した。
「彼女が邪魔だった」「前日、お金をあげるからバス停からどいてほしいと頼んだが応じてもらえず腹が立った。痛い思いをさせればいなくなると思った」と供述。
場所
住所:〒151-0072 東京都渋谷区幡ケ谷1丁目6のバス停
ルポ
・加害者46歳について
実家はいわゆる「地元の名士」で、家業の酒屋を営む他に複数の不動産を所有する資産家とのこと。本人は20代のときに就職するもののすぐに退職(精神的に病んでしまったためとも)、以後引きこもり生活に。事件当時は母親を助けて実家の酒屋を手伝っていた。一方、「自宅のバルコニーから見える世界が自分のすべて。景色が変わるのはストレスだ」との理由で近隣としばしばトラブルを起こしていたという。
2022年4月、公判を前に自宅近くで飛び降り自殺。
・被害者64歳について(このパートは主にNHKのウェブサイト「事件記者取材ノートより」を参照しました)
広島県出身。結婚と離婚を経て東京に居を定める。長く派遣の試食販売員として勤め、売上成績も優秀だったという。ただ収入は不安定で家賃滞納のため2017年頃からネットカフェ難民化、新型コロナ流行のあおりで2020年春頃に失業状態となり、その頃から途上生活を始めた模様。いつも身ぎれいにしていて路上生活者には見えなかったという証言あり。近隣の住民や通行人が安否を気遣って声をかけたり、食料や日用品の提供を申し出ても決まって「大丈夫です」と答えていたという。
しかし、こんなところで寝泊まりしていて大丈夫なわけがない。
8050問題と、独身女性の貧困問題と、「自助、共助、公助」問題と…が諸々入り混じった胸糞事件。
ホームレス生活でも「大丈夫です」と気遣いを拒んだ被害者を「人に迷惑をかけないといった強いものを感じた」「矜持を持って生き抜いた」と報じるメディアもあるが、美談のように語っていいのか、また加害者の「子供部屋おじさん」ぶりを責めるだけでいいのか、疑問は尽きない。
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