「思想改造と全体主義の心理学」から学ぶマインドコントロールの基本8種類をアメリカの精神科医ロバート・J・リフトンから学ぶ
マインドコントロールの基本8種類をリフトンから学ぶ
洗脳とかマインド・コントロールとか言うと、カルト宗教やブラック企業を連想するが、世の中を見渡すと「洗脳的なもの」が様々な場所に溢れている様にも思える。
そこで参考になるのが、アメリカの精神科医ロバート・J・リフトンの「思想改造と全体主義の心理学」だ。1961年に出版された同書は、1954年から55年にかけ、中国の強制収容所で思想改造を受けた25人の欧米人と15人の中国人を対象に面接調査を行い、当時の中国での洗脳の実態を解明し、そのエッセンスをまとめたものである。
以下にまとめたものが、同書の中で思想改造を推し進める上で大きな役割を果たしたと考えられる8つの要素である。
「環境コントロール」
外部からの情報や人物への接触の遮断、内面的な思考にまで関与し規制を加える。
組織のルールだけが唯一絶対の真実であり、それ以外はすべて否定される。
「神秘的操作」
リフトンによれば、組織やその指導者は特別に選ばれた存在として、ある種の神秘性を帯びて改造される者の前に現れるという。その神秘性の源泉は「高い目的を成し遂げるという使命」に仕えているという信念に由来しており、そこから宗教的カリスマと同じような影響力を持つのだという。
「純粋さの要求」
全体主義の世界では、純粋と不純、絶対的な善か絶対的な悪しか存在せず、そして全体主義においては不純であることは罪悪感と恥の意識に苛まれ、やがて自己批判をすればするほど自分が純化される考え始め、やがて自分の不純性を批判するようになる。
「告白熱」
3と同じく、自己批判することが純化を加速させると考え、競うように自分の罪を打ち明け、仲間同士で告白を共有し連帯感を高め始める。
「聖なる科学」
基本的な前提である理念そのものを疑うことは許されず畏敬の念をはらうことが絶対視されるが、同時にそれ以外には厳密な科学性を求められた、宗教と科学が両立している状態。
「教条主義的な文言の多用」
自由な言語の使用が排除され、完全な善を表す言葉と完全な悪を表す言葉に二分され、使用される語彙が限定された状態。それによって、知らずの内に価値観や思考がコントロールされる事になる。
「個人よりも理念を高く掲げる」
理念が個人よりも絶対的なものと見なされ、個人の経験や人生よりも優先され、個人はその特徴に応じた成長が求められるのではなく、画一的な教条に合致する事が求められる。
「生存の免除」
全体主義的価値観においては、理念に一致した者だけが「善」として存在が許され、それ以外の者は処刑される。
リフトンの著作では、全体主義やファシズムというものがカルト宗教と極めて似た特性を持つということで、大きな共通点は善か悪の独善的な二分法的価値観だが、世の中を見渡してみると多少の差はあれど似たような手法が溢れているようにも思える。
どうやらこの社会は、リフトンの警告をマインド・コントロールを防ぐ方向に活かすよりも、再現する方向に動いたようである。
それとも、放っておけば自然と全体主義的方向に傾いていくのが社会と言うものなのか。
何はともあれ、自分の身の回りの人間や組織に違和感を抱いたら、この8パターンに照らし合わせて考えてみては如何だろうか。