マルシリオ・フィチーノはプラトン・アカデミーを創設しヘルメス文書の翻訳を手がけるなどルネサンスに多大な影響を与えた神秘主義者。
マルシリオ・フィチーノ,ルネサンスに影響を与えた神秘主義者
(Marsilio Ficino 1433年10月19日 – 1499年10月1日)
マルシリオ・フィチーノとは何をした人物か?
・プラトン・アカデミーの創立
・ヘルメス文書やプロティノスや偽ディオニシオスの翻訳
・錬金術、占星術、自然魔術に対する西洋社会の関心を高める
ルネサンスと秘教の融合
ルネサンスとはギリシア、ローマ時代の文化を復興しようとする文化運動のこと。
その一方で、封建性を守るカトリック教会のイデオロギーに対する挑戦も含まれていた。
ゾロアスター、オルフェウス、ヘルメス・トリスメギストス、プラトン、新プラトン主義などを中心に異教の思想・文化をキリスト教と融合させようとした一連の運動が起きていた。
教会の権威によって封じ込められていた非キリスト教的思想を新たな思潮の活力として「再生」させた時代でもあったが、それが複雑怪奇な発展をみせる。
プラトン・アカデミーの創立
フィチーノは、大商人で政治家のコジモ・デ・メディチの侍医の息子として生まれる。
医学と哲学を学んでいたフィチーノはプラトンを翻訳する目的でギリシア語を習い始めていたが、やがてコジモは彼に別宅を与えるが、これが後にプラトン・アカデミーの創立へと続く事になる。
フィチーノはこれが、プラトンの「アカデメイア」をモデルとした一種の精神的共同体となることを目指した。
アカデミーをひらいたフィチーノは、ヘルメス文書の翻訳から始まりプラトン、プロティノスや偽ディオニシオスの翻訳を手がける。
こうした業績がきっかけとなってアラビア科学、特に錬金術、占星術、自然魔術に対する関心がいっそう高まり、古代神学とともに広く知られることになる。
融合を意味するルネサンスの思想は、フィチーノから始まったと言える。
フィチーノの宇宙観
彼の自然魔術は、占星術や錬金術とともに、ギリシア最古の神学者オルフェウスの影響が強く見られ、中世の神秘主義とネオプラトニズムとを結びつける分析を行っている。
独自に展開した宇宙論は、神、天使的精神、理性的霊魂、質、物体という5つの位階秩序から構成され、占星術を自然界のなかの相互影響の体系の一部と考えた。
3巻からなる主著『三つの生について』は当時の技術的、医学的著作だが、最後の巻『天界によって導かれるべき生』は、天体と音楽や精気との密接な関係が論じられたもの。
世界精気とは、宇宙の霊魂と身体との媒体であり、これが宇宙全体に流出して天体と地上に相互に干渉しており、この精気を吸収することによって、人々は健康でいることが出来ると考えていた。
そして、精気を育むには、占星術に根ざした惑星の神性に適した音楽や香り、葡萄酒などが有効であるとして、それらの処方が詳細に述べられている。
また、霊魂は瞑想に入ることによってより高い知識に到達し、人間の究極の目的は神の直接的認識にあると考えた。
こうしてフィチーノに始まったルネサンスの思想は、プラトン・アカデミーのピコから始まり、アグリッパ、パラケルスス、ディー、ブルーノといった神秘学者たちに引き継がれていく。